―「キレイだね。星空」―



―「うん。そうだろっ」―



―「あなたもキレイだね」―



―「え…?」―



―「だってあなたの髪…星とおんなじ色」―








時計は夜の10時を回っていた。



こどもたちを寝かしつけてリビングに戻る。



けどいつもそこにいるはずのリナがいなかった。






…ヤレヤレ、まだ春なのに。




リナがいる場所は考えなくてもわかった。



昔から何かあるとすぐそこにいっては泣いたり怒ったりしてたから。





2階の廊下の端。



ちょっとしたハシゴがついていて、屋根に上がれるようになってる。




よく2人で上がって星を眺めた。



初めて逢った日も。



そこでこの名前をもらったんだ―…。






そろりと屋根に頭を覗かせるとやっぱりリナの姿が。



月に照らされてとてもきれいに見えた。





…俺はずっと、記憶がないままでもいいと思ってた。



今までのままでいい。



君がつけてくれた〝ソラ〟のままでありたいと…。






俺はそっとリナの背中に毛布をかけた。







「ソラ…」





驚いた表情で俺を見つめるリナ。






「まだ春なんだし、体冷えるぞ」






俺はリナの隣に腰掛けた。



リナは罰が悪そうに俺から視線をそらした。



理由はわかる。



この腕の傷…リナはきっと、自分のせいだって責めてんだ。



こんなんかすり傷だし、そもそもリナのせいなんかじゃねぇのに。




それなのに、案の定。







「ごめんね…っ!ソラ…。…あたしのせいで……」






もーっだからリナのせいじゃねぇって!!



ケガしたのは自分が未熟だからだし!!




ポロポロとリナの目から落ちる涙。




泣くのは反則だろうが…っ。








「リナ」





無意識のうちに俺はリナを自分の胸に引き寄せていた。