―「君には辛いことかもしれないが、戦う為には君の記憶を蘇らせる必要がある」―







はぁ…。



中村園の屋根の上。



星と月が瞬くロマンチックな夜空の下であたしはというと…。




ため息しかでない。




昨日から何度もあたしの頭の中で響き渡る声。



イーヴルに襲われて、Hope Lightsに選ばれて…。



これから一年、あんな怪物と戦っていかなきゃならないなんて。



その為に記憶を取り戻さなきゃならないなんて。




なんで高校生になったとたんこんなデンジャラス生活を送んなきゃなんないのよ!!







記憶なんて…ないままでいいのに。



本当に、魔力なんてものがあたしの中に存在するのかな…?




あたしは今のままでいいのに。



今のままでいたい。



あなたが名付けてくれた〝リナ〟でありたいのに―…。







ファサッ…。




不意にあたしに掛けられた暖かい毛布。






「ソラ…」



「まだ春なんだし、体冷えるぞ」




そう笑いながらソラはあたしの隣に腰かけた。



いつものように優しく笑う。



だけどその手には少し血が滲んだ包帯。



月島先生の言ってたこと、ホントだったんだ。



ソラも〝Hope Lights〟に選ばれたんだってこと…。






「リナ?」





あたし…何してんだろ…。



ホントは今日だって…あたしが戦わなくちゃいけなかったのに…っ!!







「…ごめんね…っ!ソラ…。あたしのせいで…っ」





傷ついて…。



傷つけて…っ!




ごめんなさい…!!