「もう11時になるのにまだ決めてないわけ?」



そんなことを考えていたら、あっという間にハードルを跳び終え、また並んでいた。


麗奈の言葉に我に返り、体育館の外側に設置された時計をぱっと見た。


もうあの時間まで、あとたったの10分程しかない。



どうしよう……!



「……うん、悩み中」


「早く決めなよ~?あっという間にあの時間になっちゃうんだから」


「……そういう麗奈は?」



答えはきっとあの日と同じだよね、と心の中では思っていた。

でも、人の願いは誰でも気になるし興味がある。


それが人の好奇心ってものなんだ、きっと。


ふっと鼻で軽く笑ってから、麗奈は口を開いた。



「秘密だよ!」


「やっぱりねー」



こうしていると、つい思い出してしまう。


去年のこの日に違う時代で出会った、あの人のことを。



山崎さん――――…


今頃どうして……って、別に今生きているんじゃなかった。


私にとっては生きている人だけれど、実際は何年も前に亡くなっているんだ。


考えれば考える程、それは悲しい事実。