「織の願いって、何だったの?」



理科の授業が終わり、教室へと戻ろうとした時、不意をつくように紅紫 麗奈[アカシ レナ]にそう問われた。



「変なこと言っても笑わない?」



ここは私立壬徳[ジントク]中学校。

私は高蔵 織[タカクラ シキ]。


そして11月11日の今日、私にとっては運命の日。



『11月11日11時11分11秒に願い事をすると、叶う』



それを聞いたのは、ほんの数日前だった。

でも私は、いつからか憧れていた幕末へ“行きたい”と願った。


確信のない、一縷の望みのはずだった。



「別に笑ったりしないよ?」



しかし見事にその願いは叶ってしまったんだ!



「本当におかしくても、絶対に笑ったりしないでよね!」



1日だけだったというのに、新選組と過ごし、ついでに池田屋事件まで経験できた。


あぁ、有り得ない……


タイムスリップとかいうものは、あんまり信じたことがなかったからかな。



―でも。

たった一つ、私が幕末に生きた証がある。



――チリン―――‥



胸ポケットにはちゃんと、彼からもらった小さな鈴が存在している。