このお墓は、近藤さんと土方さんが織さんの為に建てたもの。


近藤さんは、この件に関して、表向きのことしか知らない。

土葬も何もできなかった。

だから何も埋まっていない。
ただお墓があるだけ。



「…織さん、そっちでは元気でやっていますか?
またおなごらしからぬこと、してないでしょうね…?」



小声でそっと、墓に向かって話しかける。


あの池田屋の日、あの一日しか一緒に居なかったはずなのに、何故だか長い時を共にしてきたような気がする。

目の前でどこかに消えてから、私は寂しいんですよ、織さん。


私にとって、貴女は大事な…大切な……



「…って言ったら、怒りますよね。貴方が……」



気配を微かに感じて、後ろを振り向く。


そこにはやっぱり、山崎さんがいた。



「別に怒りはせぇへんけど。何でそないに警戒すんのや、沖田さん」


「だって山崎さん……織さんに会ってから、何か変わったような…」


「最近、ずっとそればっかやないですか。毎日言ってるやろ」



山崎さんが織さんの想い人と知ったのは、つい数日前。

今日は池田屋から、もう1ヶ月も経ってしまった。