「副長、沖田さん。後生です、今の全部忘れてください」



山崎さんがいつもの口調で、私達がふざけているところに、そう言った。

よかった……
いつもの山崎さんに戻ってる。



「…はい!」


「分かってるさ」



私達が返事をすると、光縁寺の屋根に上り、そのままどこかへ行ってしまった。


土方さんと二人、墓前に残されて、暫く山崎さんが消えた方を眺めていた。



「山崎も辛かろうにな…」


「ですよね……って、ああっ!」


「よし捕まえたぞ、総司!」


「ずるいです~! 土方さんっ!」


「ずるくなんかねぇよ!」


「あははっ!」



こうして二人で遊んだのは、何年ぶりだろう?

まだそんなに経ってないかもしれないけど、すごく久しぶりな気がした。



「帰るぞ、総司!」


「はいは~い!」



傘を畳み、その場で立ち止まって、空を見上げた。


太陽も出ていない、雲が一面に広がった真っ白い空。

この空が晴れる頃、きっと山崎さんの心も晴れますように。


貴女の代わりに、願っておきます。



「おい総司! 早くしろよ」


「あっ、はーい」



西本願寺に屯所が移転したとしても、私はここに来ます。


山南さん、織さん。

それまで二人で仲良くしていてくださいね!


そっと微笑んでから、私は山門にいる土方さんを追いかけた。