遠くで私を呼ぶ声がする。
誰の声かは分からない。

でも、確かなことがある。


…私は、まだ死んでいないんだって。


もしかして私、不死身!?
なんて、変なことを考えられる。


私自身は、普通に戻ったみたい。

生きる世界が変わったかは……まだ分からないけれど。


「――――…!」


聴覚も少しずつ回復しているみたい。

微かな、声とも言えない音が耳を掠めた。


「……き……し……!」


やっぱり私は誰かに呼ばれている。


もしや、生きているんじゃなくて、死後の世界!?

…また変なことを考えた。


「……き―……織!!」


声は、鮮明に耳に届いた。

その声は、焦っているように聞こえる。


「――…織…! さされてるよっ!」


"刺されてる"……?


そんなの、分かりきったことだよ。

だから私は死んだんじゃない。


「織!! 指されてんのっ!!」

「はっ!? えっ…うん……あ!?」


…は…ははは……


私……戻って…る…んだ…?