大切な人は、新選組のみんな。

今はそれが沖田さん。


自分は、自分。私だ……


「この人が殺されるのだったら、私が代わりに犠牲になります!!」


ずっと受け止めていた刃を離し、男の右脇腹から左まで、横に斬る。

その間もその後も、男は何もしてこなかった。

大切な人のうちの一人を、護ることができたんだ……


「ゴホッ……コホ…コホ」


夢の中にいたような気分になっていた私は、沖田さんの咳で現実に引き戻された。

沖田さんは、私の後ろに座り込んでいた。


「沖田さん! 大丈夫ですか!?」

「嫌だなぁ、織さん。私は大丈夫ですって…」


そう言いつつも、また咳をする。
口元を見ると、微量の血がついていた。


「大丈夫なわけないでしょう……」


それを見ただけでも、涙が出てきそうだった。

沖田さんは大丈夫なんて言っているけれど、本当は大丈夫じゃない。
彼は、ある病にかかっているんだ。


病名は、労咳……肺結核。


もう何年も保たない命なのに。

大丈夫だなんて言える沖田さんは、強い。