私の方からも、腕を背中に回して、胸辺りに今度は右耳をつけ、目を瞑る。


「ほんまは、あんたと別れるんが辛かった。あないな台詞吐いて、また会いに来る顔がなかったんやけど。最後にこうしておきたかったんや」


鼓動と共に、声が聞こえる。
近くにいるんだって、安心する。

ここには、もう私が死んだから来れたんだと思ってた。
でも違ったんだ。


―みんな、生きてる。

―みんな、生き生きしてる。


「死ぬんやない。死んだら承知せえへんからな」

「分かってます…」


私を抱きしめていた腕が離れていって、山崎さんは屋根に飛び乗り、忍としての仕事に戻った。


「よしっ…と!!」


軽く伸びをして、私は気持ちを入れ替えた。

ここから局長達に追いつくとなると……想像しただけでも大変そう。


…でも、自分の気持ちがはっきりしてよかった!


重かった足取りも、今ではもう軽くなっていた。

新たな気持ちに切り替えて、一歩一歩足を踏み出していく。


鈴の音を響かせながら――…