『強風の日を選び、御所を燃やす』


確かそう言っていた。

でも今日は強風でもない。
何で今日、今夜に…?


「どうして今夜に?」


思わず私はそう聞いた。
その時すでに副長は、障子を半分開けていた。


「昼間、古高の家から武器が盗まれたらしい。それに、今夜密議が行われるようだからな。どちらにしろ、今夜にでも動き出す可能性はある」


真剣な顔つきで言う彼は、今までの優しい部分が消え、鬼に戻っているみたいだった。

今夜は危ないのか……
もしくは、今夜が危ないのか。


「今夜は祇園祭の宵山だ。見たいだろうが、お前はここにおとなしく寝てろ」

「え……」

「女はおとなしくしていやがれ」


副長は、私を突き放すように、きつい言葉ばかり並べる。

でも私……


「…私、戦います」

「おい、だから」

「戦う覚悟なんて、とうに決めています。死ぬ覚悟だって、ここに入ったからには、できているんです」


―そう。

私は戦いたいんだ。