戸惑いを抱いているあたしを余所に、廉はいつの間にか写真を撮り始めていた。


カメラのレンズ越しに海を見つめる彼の瞳は、綺麗で真っ直ぐな物で…


何よりも色気がある。


あたしは、そんな廉に引き付けられるように目を離す事が出来なくて、ずっと見つめていた。


シャッターを切る音と波の音だけが、静かな海岸に鳴り響いている。


「……そんなに珍しいか?」


「えっ……?何が……?」


「写真撮るとこ……。お前、さっきからずっと見てるから」


廉は不思議そうな顔をしながら、あたしをじっと見つめた。


「綺麗……」


頭で考えるよりも先に落ちたのは、そんな言葉。


「はっ?……あぁ、海が?まぁ確かにそうだな」


廉は驚いたような声を出した後、独り言のように言ってまたカメラのレンズ越しに海を見つめた。