レンズ越しの君へ

「ちゃんとわかり合えるから、絶対に大丈夫だ」


廉は、静かに言った。


どうして……?


何を根拠に、そんな事が言えるんだろう…。


廉はきっと、あたしと両親の事をちゃんと知らないから、そんな事が言えるんだ…。


「無理だよ……」


俯きながら否定すると、彼が急に車を道路脇に寄せた。


驚いて顔を上げると、廉は真剣な眼差しで口を開いた。


「絶対にわかり合える」


あたしは、キッパリとそう答えた彼から視線を逸らした。


「澪……」


廉はシートベルトを外して、あたしの体をゆっくりと抱き締めた。


「大丈夫だから……」


彼の声があまりにも優しくて、鼻の奥に鋭い痛みが走った。