レンズ越しの君へ

「今日は奢るから♪」


あたしが泣き止んだ後、綾は明るい口調で言った。


「え……?イイの?」


「何言ってんの!今日は澪の送別会だよ!」


「うん……。ありがと……」


そう言った後、また泣き出しそうになってしまった。


「こらこら、泣くなよ?永遠の別れじゃないんだからね!」


「泣かないよ!」


出来るだけ明るい笑顔を見せると、綾はほんの少しだけ寂しそうに笑った。


「フフッ……。最初は、手の掛かる妹だったのにな……」


彼女は呟きながらグラスを持ち上げると、あたしに目配せした。


「じゃあ、澪……。お疲れっ!!」


綾の声に合わせて乾杯した瞬間に、キンッと軽快に鳴った二つのグラス。


それが、何かの終わりを告げたみたいに思えて…


あたしは、無性に寂しくなってしまった。