レンズ越しの君へ

駅前でタクシーを降りたあたし達は、朝方まで営業している居酒屋に来ていた。


「ここ、よく来るんだよね♪」


「あたし、あんまりお腹空いてないよ……?」


飲み過ぎた上に気分が悪いあたしは、笑顔で話す綾に申し訳なく思いながら告げた。


「何か食べなきゃダメだよ!澪、今日は飲んでばっかりだったじゃん!」


「気付いてたの……?」


「……あのね、澪」


今日は綾とテーブルが近くなる事は一度も無かったから、彼女の言葉に驚きを隠せなかった。


「当たり前でしょ!今日は澪の様子が変だったから、出勤した時からずっと心配してたんだよっ!!」


真剣な表情の綾に、感謝の気持ちしか無い。


「綾……。ありがとぉ……」


込み上げそうになった涙を堪えて小さく呟くと、彼女は困ったように眉を下げながら笑みを浮かべた。