レンズ越しの君へ

「あ〜、今日も疲れた〜……」


「ねぇ、どこ行くの?」


店から大通りまでの道を歩きながら、小さく尋ねた。


「内緒♪」


「え……?」


「まぁイイじゃん♪」


意味深な笑みで答えた綾は、タクシーを拾った。


「駅前までお願いします」


そして運転手に行き先を告げると、少しだけ不安になっていたあたしにニコッと笑った。


綾の意図は、わからないままだったけど…


タクシーに揺られながら、窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。


終電は無くなっているのに、街はまだたくさんの人で溢れている。


あたしは、行き交う人達の中にいるカップルを見付けては、廉の事を想っていた。


廉に会いたい……


窓に映る自分を見つめながらそう思った時、胸の奥が苦しいくらいにギュッと締め付けられた。