レンズ越しの君へ

「じゃあ、ペアにしとくか!」


廉は笑顔を見せると、店員にペアの時計を持って来るように言った。


そして提示された物の中から候補を上げていき、最終的には二種類の時計に絞った。


「どっちがイイ?」


「廉は?」


時計を見ながら尋ねた廉に、あたしは訊き返した。


「俺は、お前に訊いてるんだよ!」


「う〜ん……。あたしはこっちかな♪」


あたしは、アンティークっぽい方を指差した。


「じゃあ、これにするか♪」


「えっ?廉はこれでイイの?」


自分の持ち物にはとにかくこだわる廉が、簡単に頷いてしまった事にすごく驚いた。


「今日は、澪に選ばせるって決めてたからな」


今日の廉は、本当に上機嫌だ。


また笑顔が零れたあたしは、嬉しさを全身で伝えるように彼の腕にギュッとしがみついた。