レンズ越しの君へ

車のドアが閉まる音がして、ゆっくりと瞼を開けた。


「澪、着いたぞ」


助手席に廻ってドアを開けた廉は、瞼を擦って頷いたあたしの手を引いて歩き始めた。


着いた場所は、彼の好きなブランド店。


「何見るの?」


あたしが尋ねると、廉がどこか楽しげに笑った。


「俺と澪の時計」


そういえば、彼は前から新しい時計が欲しいって言っていた。


でも……


「あたしも?」


あたしは、欲しいなんて言った覚えは無い。


すると廉は、時計を選びながら答えた。


「お前にも買ってやるよ!」


「じゃあ、ペアにしよ♪」


あたしはすごく嬉しくて、笑顔で提案しながら廉を見上げた。


「ペア?」


「……ダメ?」


小首を傾げながら訊いて、廉の腕に自分の腕を絡めた。