レンズ越しの君へ

廉が注文してくれたのは、“シェフの本日のオススメ”と書かれたコース料理だった。


「美味しい♪」


次々と運ばれて来る、珍しくて綺麗な料理。


それらを食べる度に、同じ言葉を零した。


「もうそれは何回も聞いたよ!他に言う事ねぇの?」


呆れたように笑う廉を見て、また笑顔になった。


今日の彼は、よく笑ってくれる。


「ここ、来た事あるの?」


「この間、仕事でな。お前がこんな店が苦手なのは知ってるけど、食べさせてやりたかったから……」


「たった今、好きになったよ♪」


廉の言葉が嬉しくて、あたしは満面に笑みを浮かべた。


「ありがとう、廉」


「単純な奴……」


呆れたような言い方をした廉は、まんざらでも無さそう。


そんな彼を見ながら、あたしはやっぱり笑顔が絶えなかった。