「わぁ、美味しそう!」

唯は、ぱあっと花開くように笑ってみせた。

「いただきまぁす」


たった1度の微笑みに、恭平はどれだけ救われたろうか。

そして今さっきまでの黒い渦も、気付く間もなくどこかへ飛んでなくなっている。

恭平はカルボナーラを慣れない手つきでフォークへ巻き付けると口へ運んだ。

「…なんか、不思議だよな」

「…何が??」

「こうやってまた唯と…過ごすなんて思わなかった」

「んー、そう??」


何も知らない唯はただ微笑むばかりだった。


それは最後に与えられた、ひとときの穏やかな時間―。