「依子さん…!」

「お久しぶりです」


恭平も唯についで挨拶をした。唯が驚いた顔をしている事に、この時彼は気付かなかった。


「仲良いのねぇ、もう高校…何年になったのかしら??」

「あ…3年です」

「じゃあ来年で卒業なのねぇ。」

「はい。…あ、今日は…どうしようかなぁ」

唯は植木の並ぶ方へ向きかえった。


「このチューリップの赤、可愛いですよね。これと…あとローズマリーの鉢植え、お願いします」



会計が済んで店を出ると、唯は言った。


「恭くんと私って、前にも2人でここに来てたの??」

「ああ、…けっこう前だったと思うけどな」

「なんだぁ、先に言ってよ。私記憶にないから、恭平くんが依子さんにお久しぶりですって言ってるの、びっくりしちゃったんだからぁ!!!」

「ああ、悪い。…そんな怒るなよ」

「もしあの時、私が動揺したら記憶ないのが依子さんにばれちゃってたかも知れないじゃない??」

「ん、ばれちゃまずいのか??」

「まずいって訳じゃないけど…気を遣わせちゃうかもしれないもん」


そうだ、唯はそういう女だ。人に心配をかけさせないような生き方をする。

そんな唯は優しいと思う。

だけど―


「そっか…ごめんな」


だけど


それでお前は大丈夫なのか??


疲れたり、つらくなったりしないのか??


「あ、ありがと…」


唯が手にさげていた、花の袋を恭平が受け取った。