それにしても、案外あっさりと約束を取り付けてしまった。

正直、断られる事を前提に誘ったようなところがあったし、意外な事態に嬉しさと困惑が入り交じった。


以前の忙しいだけの唯とは違う。休日にこうして会うことだってできる。




もしかしたら

今度こそ―



しかし、その希望を妨げるように黒い渦がたちまち心を覆う。


今は彼だけの記憶―


それをいつか彼女が思い出す日が来たら…



考えを掻き消すと、恭平はベッドから降りて服を着替え始めた。


思えば、異性と休みに出掛けるのは久しぶりだった。

2年の頃、クラスメイトや後輩に誘われて出掛けたこともあったが、どこかピンとくる魅力のようなものを彼女らには感じなかった。

愛着も執着も湧かずに、2度目はないまま今に至る。きっともうケータイの電話帳にも彼女らの名前は無いだろう。


部屋の窓を開ける。ふわりと少し温かい風が舞い込んだ。


「これだと暑いか…」


恭平は、肩から色が切り替えられている7分袖のシャツをクローゼットから取り出した。


唯は何を着てくるだろうか。