「あっ、唯、時間…電車!!!」

「あ~っ、そうだ!!!」

「悪い、朝から呼び止めて」

「ううん、声かけてくれて嬉しかったよ。またね」


唯はにこっと笑うと駅の方へ足早に向かっていく。

その後ろ姿を見つめていると、ふいに彼女が振り返った。

「そうだ、右足っ。怪我したでしょ??アイシングしなきゃだよ」

じゃあね、と言って駆けていった。


中学の時、唯はサッカー部のマネージャーで、よく恭平に同じ事を言った。

それは母親のような気遣いだったが、かと言って鬱陶しいものでは決してなかった。


何故だろうか。

少しだけ目の前が、涙でぼやけた。