「悲劇のヒロインのように振る舞っていたいのなら、他所に行きなさい。ここは願いを叶える所。自分の素性も言えない子供は帰ってくれるかしら?」
アリスはそういうと部屋の扉を指差した。
「出口はあちらよ」
少女はアリスを見つめると、閉じていた口を開いた。
「・・・紫、麻・・・」
言うと同時に少女、紫麻は目から一筋涙を流した。
「津田、紫麻・・・です」
それを聞いたアリスは暫く見据えたまま、ゆっくりと腕をおろした。
「紫麻、ね。それで、貴女の願いは?」
腕を組んで聞くアリス。
「わ、私を・・・助けて・・・私を鳥籠から・・・連れ出して・・・」
か細い声で喋る紫麻は、涙を流しながら言った。
「・・・それが貴女の願いね」
アリスがそう訊くと紫麻はコクンと頷いた。



