アリスが向かった先は庭。

庭には色とりどりの薔薇が咲き乱れており、イオンは今その手入れをしていた。

その背中を見つけたアリスは久しぶりとも言えるくらいで、イオンに近づいた。




「・・・イオン・・・」




「・・・・・・・・・」





アリスが呼び掛けてもイオンは反応無しで、黙々と薔薇の傷んでいるモノを切る。


流石にアリスもツキンと胸が痛んだ。


今までは呼び掛ければ必ず答えてくれていたからだ。




「ねぇ、イオン・・・」




「・・・・・・・・・」




「っ、イオンってば・・・」




「・・・・・・・・・」





幾らアリスが呼び掛けてもイオンは何の反応も出さない。




「イオンッ・・・」





ギュッと服の裾を握りしめ、瞳から溢れ出そうな涙をぐっと堪える。




「ッ・・・・・・」





俯いて唇を噛み締めるアリスは、変な意地を張らずにさっさと謝ればよかったかもしれないと後悔していた。


もうイオンは、自分とは話してくれないのか・・・。





「アリス・・・」




何時も聞き飽きるほど聴いていたのに、久方ぶりに聴いたその声は、アリスの名を呼んだ。