「おはよう、今朝も寒いね」 彼に挨拶された。

足元では、ウチのやんちゃ坊主コタと、じゃれて遊んでいるトイプードルの"さくら"。

そう、"さくら"は彼の連れている犬だ。フワフワのかわいい彼にピッタリのやっぱりフワフワのアプリコット色のトイプードルの女の子。

ウチのやんちゃ坊主コタと仲良しなのだ。

「おはようございます。ホント寒いですよね」

私は嬉しさを隠せず、満面の笑みで返す。

「昨日、さくらがね…」

「ウチのコタは…」

私達が話すのは犬の話題だけ。

だって私達は散歩途中に会う犬友達だから。

名前も知らない彼は、それ以上でもそれ以下の関係でもない。

ただの犬友。悲しいけど、それが現実だ。

私は彼を大好きだけど、彼は私をコタの飼い主としか見ていない。

でも話せるだけで幸せ。