引きずり込まれたこの真っ黒な不良の世界を、私は少し好きになった。

海は私の腕を掴んで、ゆっくりと歩き出した。

その時に落ちたカッターを拾うと海に取り上げられた。

「何?」

答えることなく、海の手から綺麗な弧を描いて青いゴミ箱に入っていった。

そして再び歩き出す。

「…ねぇ、海。」

返事は返って来ないけど私は続けた。

「なんでここにいるって分かったの?」

「お前を見たって奴がいたから。」

「誰?」

京のこと?

「お前は知らない奴。」

…本気で誰?