私は慌てて諭吉さんを握りしめ、海の扉を叩いた。
「海、人が来た!!」
二階のここまで、あと何秒か。
私はどこに隠れれば良いの!?
その途端、扉が開く。
扉は私を飲み込んで、すぐに閉まった。
海が入っていた部屋は、薄暗かった。
扉の外で、大人数の足音が聞こえる。
「海、また誰か連れ込んでんのか?」
そういう声と共に。
私は気づいた。
靴、玄関に置きっぱなしではないか…。
溜め息をついて、薄暗い部屋の中で海が潜るベッドを見つけた。
私が入っても気づかないらしい。
死んでるんじゃないかと思うくらい、ピクリとも動かない。
「…似てる。」



