喧嘩しにくいから、なんだ…。 ベッドに胡座をかいた海は、少し笑っている。 「一応、伝統あるもんだから。捨てるわけにはいかねぇし。」 確かに、それはもったいない。 李久さんのことには、触れないで話をした。 「…今度、うちにも来てね。一人だけだし、すごくつまんないと思うけど。」 「あぁ、行く。」 それだけで十分。 言葉なんて、沢山要らない。 それから、本棚に置いてある本を読む。 「ご飯出来たよー。」と海のお母さんの声がしたみたいだけど、気付かなかった。 没頭していたら、海の視線に気付く。