自分の質問に答えないのが気に食わないのか、海は私の手首を離そうとしない。

「…家には帰りたくない。」

私は運転席のシートを見ながら呟いた。

運転してるのは、どこかの高校の制服を着ている男。

車の免許持ってるの?

少し疑問も浮かんだけど不良の世界は、何でもありな気がするからスルーした。

海は私が答えても、返事もしなければ手首を離そうともしなかった。

そして、急に車が止まったかと思ったら、何も言われずにまた手首を引っ張られた。

桜並木道があった。

ヒラヒラと散る花びらは人の命のように儚い、とよく例えられる。

私にも妹がいたけれど、病気がちで入院を繰り返して、死んでしまった。

でも儚くはなかった。

ちゃんと生にしがみついていたから。