私は小さく首を横に振った。 違う───そう否定したわけじゃない。 確かに九条さんが居たから、白百合の海の元彼女は海に泣きついてきたのかもしれない。 でも、海から離れたのは私の意志。 「お嬢、京さん。お呼びです。」 障子の外から男の人の声が聞こえて、九条さんと京が立ち上がる。 忙しい…のかな。 「離さねぇからな。」 海の声が聞こえた。 一瞬、さっきの頭の中を見透かされたのかと思った。 「…うん?」 「理由なしに簡単に離れていきやがって。最終的に頼ったのが篠原の女。」 眉を顰めている。