「嫌だって。寒い!」

そう言いながらも、抵抗はしていない。

私も行きたいと思い、立ち上がる。

海は…。

立ち上がらなかった。

「行かないの?」

「あぁ。」

「…寒いから?」

「…あぁ。」

「……絶対?」

「………行く。」

最後の方は呆れた感じで答えて、私はその手を掴んだ。

…なんと!

自然と手を掴んだ自分にも久しぶりに触れる海の肌にも驚く。

それに気づかないフリをして、手を引っ張った。

「滑んなよ。」

「うん。」

黒いブーツを履きながら答える。