その場所が最後の家族旅行になるなんて。 「…あ。」 コロコロ…と転がる音。 ベッドの下を見たら、ひとつの指輪がある。 このエンゲージリングはふたつでひとつ。 私のお母さんとお父さんの指輪だった。 それはあくまで過去形でしかないけど。 私はその日、初めてお母さんとお父さんが揉めているのを見た。 いつも、お互いにすれ違おうとしてるみたいだったから。 お母さんは、泣きはしないけど喚いていて。 私はもう分かっていた。