不意に頬に冷たい物が当たって、目を見開いた。

…夢。

「大丈夫か?」

穏やかな声色が聞こえた。

私はそっちを見ると、海が頬に冷たい手を当ててくれている。

海は、私が正気に戻ったのが分かったら頬から何かを拭った。

涙だった。

「…魘(ウナ)されてた。」

何も言わない私に、言葉をかけてくる。

…嫌な場面だけが印象強くて、後は何も覚えていない。

だから、お母さんの言葉の後、私は何をどう反応したのか覚えていなかった。

「…水…。」

カラカラになった喉から掠れた声を出す。

私が寝ているのは、ソファーの上。