お風呂場に入ると、九条さんはバタバタと引き出しを開ける。
「椎名のならある。」
と言って、海のらしい黒いスウェットを渡してくれた。
「ありがとう。」
「大体は揃ってると思うし…お湯は沸かしてないみたい。沸かす?」
私は首を横に振った。
「じゃあ、後はテキトーに出て。バスタオルはこれ。」
「…うん。」
「あと、うー?」
テキパキと説明する九条さんの手元を見ていた私は目線を上げた。
「おめでと。」
極上の笑顔で…何を言ってるの九条さん!!
「何何何何何!?」
「…じゃあね、後は頑張りなさい。」
…何を頑張るんですか、九条さん!!
外れそうなくらい口を開いて、九条さんが出て行った扉を見つめた。



