九条さんはそっちを向いたけど、首を横に振る。 「違う違う。京じゃなくて、豹吾(ヒョウゴ)の方。」 ヒョウゴ? 話に入ってなかった海が静かに指差した。 私も九条さんも指差した方を見る。 髪の毛が真っ赤な、あまり背丈のない男子。 私は知らない人。 「あぁ、あそこにいたのか。豹吾!」 九条さんは、そう言うと向こうに行ってしまった。 「豹吾って…?」 海を見上げた。 海は煙草を取り出して、煙を吐いた。