良いのかな。
追いかけて来たらどうしよう、と後ろをチラチラ伺った。
「来る訳ない。一応、顔立ててやったんだし。」
それに気付いていたのか九条さんは言った。
「…そうなの?」
「そうでしょう?さっきあたしがあの場で、あの人を殴ってたら、あの人ここばっかりじゃなくて自分の縄張りにも帰れなくなる。」
フンと鼻で笑っている。
「なんで余所の人だって分かったの?」
もうひとつの疑問を投げかける。
そして、九条さんの自信たっぷりの笑顔が見えた。
「だって、一般以外であたしとかあんたの事、知らない人なんて一人もいないから。
繁華街は…ほら、椎名の庭みたいなもんだから。」



