九条さんに圧倒されそうな空気は感じない。

きっとそれは、九条さんの事を何も知らないからだと思った。

私は、その不良の世界には疎くて女友達から言われるのを耳に挟むくらいだから。

その距離が丁度良いと思った。

別に九条さんは私が傍に居て、嫌そうな顔はしないから。

私は冷凍食品のクリームコロッケを口に運んだ。

ただ…顔や態度に出ないだけかもしれないけど。

空を見上げた。

春の空は嫌みなくらいに綺麗だった。

壊したくなるような、そんな空だった。