晴れ晴れとした顔で、上を見る。 …私は私。 ついこの間、呪文みたいに自分に言い聞かせていた言葉。 「ね。京?」 一瞬、九条さんには幻覚が見えているのかと心配になった。 でも、階段の踊場に京が現れた。 「わかってた?」 「バレバレでしょ。」 九条さんが微笑んだからか、京も笑う。 “お互いに” 海の言った意味がとてもよく分かった。 「九条さんって耳良いんだね。」 「うん、常人の三倍はよく聞こえる。」 当たり前の事のように言うから驚く。