少しって言ったら、本当に少しで。 繁華街の中に入ると、無意識に海にしがみついた。 「…あの。」 数cmだけ前を歩く海に話しかけた。 「あ?」 「視線が痛い。」 繁華街に入った途端のこと。 週末だからかは、よく分からないけれど夜中なのに人は多かった。 その人の視線が海に向けられて…私に向かう。 「気にしないで歩け。」 「でも…。」 「堂々としてろ。」 人の間を上手に通り抜けていく海。 上手に通り抜けているんじゃなくて、人が海の行く道を開けているんだと気付く。