ふと視線を下ろして、テニスコートの奥の湖に目を遣った。


真っ黒な湖の水面には打ち上げられた細い光が大輪の花を咲かせ、ハラハラと散っていく様(サマ)が鮮明に映っている。


空に浮かぶ月までもが、水面で揺れていた。


夜の湖という名のキャンバスに描かれた、夏の花火と満月。


あぁ……


こんなにも綺麗な情景を好きな人と二人きりで見れるなんて、何て幸せなんだろう…。


「綺麗……」


そう呟いた瞬間、胸の奥が熱くなった。