「送ってくれてありがと」
「あぁ。じゃあな」
家の前に着くと、隼人はクルッと背中を向けて歩き出した。
「あ……」
でもすぐに立ち止まり、パッと振り返った。
「番号教えろ」
「携帯の?」
「当たり前だろ。家の番号教えろなんて言わねぇよ」
「……ですよね」
連絡先を聞く時に「教えろ」なんて言い方する人いないから!
あたしはポケットから携帯を取り出して苦笑いを浮かべた。
「隼人って、メールとかする?」
「ほとんどしない」
そうだろうな、と思ったけどそこは口にしないでおこう。
「じゃあな」
連絡先を交換し終えると、隼人は軽く片手を挙げて歩き出す。
あたしはその背中が見えなくなるまで、ずっと目で追い続けた。
怖くて悪い人。
噂や見た目だけで、隼人にそんなレッテルをはっていた自分が情けない。



