「今日はもう辞書使わないからないから、急いで返しに来なくていいからね?」 『だから、午後の休み時間はこないで』 そんな意味を込めて言うと、シュンくんはニコッと笑って頷いた。 「分かった、ありがとう。今度何かお礼するね」 「お礼なんていらないから……」 『だからこれ以上、あたしに構わないで』 そう言いたいけど、そこまで突き放した台詞を口に出すのはためらわれて。 「じゃあ、また」 そんなあたしをお構いなしにシュンくんは手を振って教室から出て行った。