「何で俺が睨まれなくちゃなんねぇんだよ」
事務所に入り、俺はそう呟きながら舌打ちをした。
だから指導係なんてやりたくなかったんだ。
俺は基本的に気が短い。
相手が男であっても女であっても、優しく丁寧に指導するなんて無理だった。
「先に戻るからお前はここで頭冷やしてろ」
うんざりしながら美咲に視線を移した瞬間、
「やーだ。あたし、隼人と一緒にいたいんだもん」
美咲はニコッと微笑み、俺の腕に抱きついてきた。
「……お前、何のつもり?本気でキレられたいわけ?」
俺は勢い良く腕を振り払って美咲を睨み付ける。



