でも、全くといっていいほど美咲からやる気を感じられない。
窓を拭かせれば適当で俺がやり直すことになるし、客にトイレの場所を聞かれれば間違って事務所に案内した。
「お前さ、いい加減にしろよ。何回言ったら分かるんだよ」
「ごめんね。あたしおっちょこちょいで」
「おっちょこちょいとかいう問題じゃねぇだろ。覚える気あんの?」
「ごめんねぇー、覚える気はあるんだけど、なかなか覚えられないの」
謝っているものの、ヘラヘラと笑い反省している様子が感じられない美咲。
仕事を二倍に増やされた俺の苛々は頂点に達していた。
「女だからって笑えば許されると思うなよ。バイトとはいえ一応金貰ってんだぞ?」
「でも、店長は美咲さんの笑顔は良いねって褒めてくれるよ?」
「あのな、少なくとも俺はお前の笑顔にかなり頭にきてるから。それだけは覚えとけ」
「……ひどい。あたしだって頑張ってるのに……」
「今度は嘘泣きかよ」
大袈裟に泣き出した美咲に顔を引きつらせていると、
「新城!お客さんに店員同士の喧嘩を見られたらどうする!早く美咲さんを事務所に連れていけ!」
店長は俺達のいざこざに気付き、眉間に皴を寄せながら俺を睨んだ。