『まだ時間大丈夫でしょ?』
ニコやかにそう言われると、断ることが出来なくて。
それに、裕がもっと一緒にいたいと思ってくれていると勝手に喜んでいた。
『未来を家まで送って行って親と会ったら気まずいから』
裕に家まで送ってもらったことは一度もない。
何かと理由を付けて、あたしの両親と会うことを嫌がった。
『今日は和食って気分だな』
ご飯を食べに行く時も、主導権は裕が握っていた。
自分が主導権を握りたかったわけじゃない。
だけど、ほんの少しでも意見を聞いてほしかった。
「なんで大切にされてなかったって気付かなかったんだろ……」
あたし、本当にバカだよ。
よくよく考えれば、絶対に気付けたはずなのに。
でも、あの頃は裕が好きすぎて。
裕だけがあたしの全てだったから。



