「二度と女に会えない顔にしてやろうか?」


俺は男の顔面を勢いよく殴りつけた。


拳が顎(あご)をとらえる。


男は床に尻餅をついたもののすぐに立ち上がって大声で叫んだ。


「……痛ってぇな!警察呼ぶぞ!!」


「勝手に呼べよ。今の状況見られたらどっちが悪いか一目瞭然(いちもくりょうぜん)だけどな」


「クソっ!!」


口の中に広がった血を吐きだし、男は俺を睨みつけた。


その反抗的な目が俺の怒りを煽(あお)る。


「二度とこんな真似できないようにしてやるよ」


俺は男を押し倒して、馬乗りになると自分の拳を何度も男の顔面に振り下ろした。


「……ゴホッ!ウゥ……ッ…」



呼吸が荒くなり次第に腫れ上がっていく顔。 


男は口から鮮血混じりの泡をふき、わずかに体を震わせた。



「なぁ、痛いだろ?」


どんなに相手を痛め付けても足りなくて。


「でもな、未来の痛みはこんなもんじゃねぇんだよ!!」


「もう……やめ……てくれ。俺が……悪かった……」


目に薄らと涙を浮かべて、懇願(こんがん)する男を俺は冷ややかな目で見下ろした。