全てを最初から持たない者と、持っていたものを全て失った者は、果たしてどちらが不幸といえるのだろうか……




少なくとも、アレックスは自らを不幸だと思ったことは今までなかった。

初めから何も持たないことがあたりまえであったから……

長年育った孤児院で、家族がいるものは無かったから、それを比べることもなかった。

こんな世の中だから、自分のような身上の人間がいても不思議はなかったし、また、訓練と眠るだけの日々で、同じ孤児院の子供たちとの交流も制限された生活の中で、他人の身の上を聞くこともなかったから……




『返して!! 私の家族を……返してっ!! 返せっ!!』



泣き叫び、失くした家族を求める少女の姿は鮮烈な印象をアレックスに与えた。




(彼女はこれから、一体どうなる?)




何故か……



彼女の行く末が気になった……