何度か彼女がいる病棟へと、アレックスは足を運んだ。

幾つかのベッドが並べられた病室。

体のあちこちを包帯で巻かれた少女は、いつ行ってもベッドに寝かされたまま。

「コロシテヤル」

ずっと、その言葉だけをぶつぶつと呟いていた。

青い大きな瞳は虚ろで。

アレックスがずっとそばで座っていようとも。

その視線の先に手をかざそうとも。

その瞳には何も映っていないのだと……

彼女はまだ、母と弟を失ったあの日の悪夢の中にいるのだと。

それはアレックスにも理解できた。

だから言葉をかけることすら出来ず、ただ見ているだけしかできない。

そして存在を認識されることすら出来ず、病室を去るしかなかった。