(俺は、欠けているのか?)



マリウスを救えなかった自分を責めるように見たボルグ。

マリウスが火に飛び込んだときも、赤子をかばい、自らの身を焼いた女を置いて去った時も

――もう助からない

そうとしか思わなかった自分はおかしいのか?

彼を、彼女を置きざりにした自分は間違っていたのか?

――お前に、情はないのか?

何度か言われた言葉。

(俺には情がない? 情が無い俺は普通ではない?)

爪を噛んでいた唇から、思わずつぶやきがもれる。

「俺は……人間らしく、ない?」

今まで何の疑念も抱かず生きてきた。

自分を生かしてくれた国に報いるため、任務を全うする。

任務遂行に妨げになるものは、切り捨てていく……常にそうしてきた。

命令ならば、敵国の人間を容赦なく殺す。

国を守るために生きる。




それが、生活の全て――