そんな自分は、あんなちっぽけな存在にすら遥かに劣る。

人間は地上に存在する生物で最も賢く崇高な種なのだと、時々学問とやらを教えにくる婦人が言っていたが本当だろうか?

少なくとも、自分よりあの小鳥の方がよっぽど世界を知っている。

だって、あの子は自身のその目で見ることが出来るのだから。自らのその羽で世界を駆け巡ることが出来るのだから。

誰かの手を借りねば、自分の身一つ動かせない。

誰かの口を借りねば、何一つ知ることもできない。

ましてや世界をこの肉眼で見ることなど夢のまた夢。




覚えているのは狭い部屋と。

決まって訪れる世話係と。

切り取られた景色だけ。




何の変化もない狭い世界。意味もなく、何も成さず、何も残さない……それなのにただただ生を繋いで。

自分は何のために生まれたのか。
何のために生かされているのか。
自分が何者かすらわからなくなるような、無意味な日々。




全てが変わった、あの日までは――